So-net無料ブログ作成
検索選択

AMDの“Zen”と、HBM [ハードウェア]

かなりの長文なので、要点だけまとめて最初に書いておく。

・AMDの“Zen”はIPCが40%も上がるらしいが、本当なのか疑問。
・HBMはAPUにこそ搭載されるべき。


以下、その詳細。


去る5月6日に発表された、AMDの新型CPUコア“Zen”。
詳細については関係各所に掲載された記事にお任せして、個人的に注目している点について。


まずは私が最も注目した点から。

ZenはIPC(クロックあたりの命令実行数)が、数ヵ月後市場に登場する予定の「Excavator」コアのCPUと比べて40%も向上するそうだ。
これはちょっと俄かには信じがたい。しかし、そう発表されている。

もしこれが本当だとすると、性能的にIntelのCore iシリーズにほぼ追い付く事になる。
もちろん実際の処理能力はコアのIPCだけで決まるわけではないから、実際にアプリケーションレベルのベンチマークで計測してみないと正確なところは不明だが。

現行のBulldozer系コア(含むExcavator)はIPCを落としてでもIntel製CPUやK10と比べIPCが低い分は高い周波数で動作させて性能を稼ぐという設計考え方だった。これはかつてIntelがPentium4で失敗した考え方に似ていたが、その失敗を見ていたにも関わらずIPCの重要性を甘く見たAMDも失敗した。(2015/10/12 注記:元々製造プロセスの微細化がIntelと比べ遅れていたおかげで限られた面積に一つでも多くのCPUコアを載せ、IPCを犠牲にしてでもマルチスレッド性能を稼ごうというコンセプトだったが、結果的にIPCの減少分はクロック数を上げる事で対処しなければならなかったという事。加えて一部不適切だった表現も訂正)

これをK10のようなIPCを優先した設計に戻し、Intel同様にコアの空いている演算ユニットを効率よく使いまわすSMT(Simultaneous Multi Threading)を採用して論理コアを増やす。つまりIntelのハイパースレッディングのように物理コア2個のCPUでもOS側から4コア以上に見せるCPUになるという事だ。

しかしIPCの向上が本当だとしても、AMD製CPUの伝統的な欠点であるキャッシュヒット率の低さや、キャッシュに使用されるSRAMやDRAMのアクセスレイテンシが多い点が改善されているかが問題だ。
このキャッシュ周りの性能が少なくともIntel並みになっていないと、せっかくIPCが40%も向上したコアの性能を著しく損なう事になる。
AMDによると「キャッシュシステムを一新、広帯域かつ低レイテンシのキャッシュ階層の実装」という事だがどうなる事やら。
私としてはそこがとても心配だ。


Zenについてはもう一つ注目している点があるが、これはハイエンドCPUのFXとAPUのプラットフォームが統一されるという事。
今まではFXのSocket AM3とAPUのSocket FM2+で分かれていたが、漸く統一されるわけだ。

何故こんな事が注目なのかというと、それはコスト問題に大きく関わるから。
当然2種類のプラットフォームが存在するよりも1種類である方が安く出来る。
プラットフォームとして安く出来るという事は、コスト的な余裕を設計や部品の高性能化にまわす事が出来るので、ローエンドはより安く、ハイエンドは同等の価格でより高性能に出来るのだ。
この問題は単に値段の問題だけではないのである。


それから同日発表された、HBM(High Bandwidth Memory)採用のGPUについて。
HBMといえばGDDR5に代わる新しい広帯域DRAMの規格であり、GDDRの数倍という転送速度が売りの新型メモリーの事だが、これがついに登場する。

GPUの処理速度の足を引っ張るVRAMがGDDR5の数倍の速度になると、これは革命的な性能向上が期待出来る…かもしれない。事実、同じGPUを採用するが、VRAMがDDR3とGDDR5のカードの2種類で10%以上の速度差が出ているケースもある。
もしHBMの広帯域に最適化したGPUが出るとすれば、否応にも期待が高まるというものだ。

他にHBMの採用で変わるところは、今までグラフィックカードのVRAMに使われるメモリーはカード上のパターンにハンダ付けされていたが、HBMではGPUのパッケージ上にメモリーチップをハンダ付けされるという事。
GDDR_HBM.png
これはカードの小型化に貢献し、カードの基盤面積を大幅に削減、そして積層の数もメモリーの配線が不要になるために削減が可能になる。恐らくハイエンドのグラフィックカードは6層以上だと思うが、これが4層以下でOKとなれば基盤面積の削減と合わせてかなりのコストダウンになるだろう。
ただし、その代わりにHBMのコストがかなりのものになるだろうから、カード全体のコストはあまり変わらないかもしれない。


と、ここまでGPUに関する事を書いたが、本当に私が注目するのはHBM単体の持つ可能性だ。

私個人としては、HBMはGPUだけでなくAPU(CPUでもいいが)のためにもあると思う。
APUのパッケージに直接載せる必要がある以上、HBMの容量が決め打ちとなり後から拡張が出来ない問題が出るが、それは最低で4GB、上位で8GBと2種類の製品を出せば需要のほぼ全てを賄えるし、どうしても8GB以上メモリーが必要ならば別にDDR4の外部スロットでも付けてここに刺したメモリーをRAM Diskとし、仮想メモリーのページファイルの置き場にでも使えば良いし、※「ReadyBoost」のような使い方でも良い。
電源を切るとDRAMのデータは消えてしまうが、これはパソコンの電源を落としてもリフレッシュ動作だけは継続させるようにすれば良いし、バックアップにHDDやSSDを利用する手もある。
(ウルトラCとして非常に薄く小型のマイクロソケットを作り、これにチップを載せるという手もあるが)

このメリットは非常に大きいと思う。
何故なら現在CPUの最大のボトルネックはメインメモリーの遅さにあるからだ。もちろんパソコン全体で考えれば最大のボトルネックはストレージ、つまりHDDやSSDの遅さが最大だが、それでもCPU単体のスループットの足を直接引っ張っているのはメインメモリーなのでかなり違う。

とはいえ現実的に考えたらどうかというのは、実際に試作して検討する必要があるのでわからない。
問題があるとすれば主にコストの問題だろうが、単体グラフィックカードとAPUでは出荷数の桁が違うのでそれほど問題になるとは思えない。
今の所はHBM自体が初物という事で生産数も少ないしプレミア価格だろうから現実的ではないだろうが、1年も経てばコストの問題も解消するはず。

私の妄想の域を出ないアイデアだが、もしAMD内部にこのようなアイデアがあるなら是非実現して欲しいものだ。


※Windows 7以降のWindowsには「ReadyBoost」という、USBメモリーをキャッシュに使う役立たずな機能があるが、これのDRAM版。

nice!(1)  コメント(4)  トラックバック(0) 
共通テーマ:パソコン・インターネット

nice! 1

コメント 4

NO NAME

AMD,次世代Radeonで採用する積層メモリ技術「HBM」を解説。キーワードは「高性能&低消費電力」
http://www.4gamer.net/games/302/G030238/20150518043/

HBM搭載APUはAMDも考えているようです。
A8とA10でたいした差がつかないとかiGPUの帯域不足はCPU以上に深刻ですしHBMを搭載したAPUを早く拝みたいですね。
by NO NAME (2015-05-24 23:10) 

98式軍刀

NO NAME様

5日も前の書込みでは私の返信など気付いていただけないかもしれませんが・・・

情報ありがとうございます。
いやもう、この流れは必然といいますか、正直このような発表があった事に救われる思いです。
なにしろAMDは長年Intelの後塵を 後塵を拝しっぱなしですからね。
私も一日も早いHBM搭載APUを拝みたいと思っています。
by 98式軍刀 (2015-05-29 23:32) 

電動

今更のコメントですが
FXの趣旨はコアの性能を落としてでも
マルチスレッド性能の方向に振る
だった筈なのでペン4のソレとは意味が全く
違うと思うのですが。
by 電動 (2015-10-09 04:06) 

98式軍刀

電動様

この記事の趣旨がZenと「IPC」の比較ですので、本質で言えばP4と同じとは言えないですが、話を単純化するためにあのような説明になりました。

ですが今考えると良い説明ではありませんね。

ご指摘の趣旨に沿うよう、後日記事を訂正しておきます。
by 98式軍刀 (2015-10-09 19:29) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

メッセージを送る